A:近年、住宅内部の段差を無くしたバリアフリー住宅が、大手住宅メーカーを中心に発売されています。段差を無くして障害者やお年寄りに優しい住宅は、必要なだけでなくこれから一層取り入れられなければならないと思います。
現在バリアフリー住宅に使われている畳は、ご質問のように薄い畳を使用することで廊下や洋間との段差を無くしている物が多いようです。しかしながら、薄い畳には、次のような危険性や将来の問題点が考えられます。
@畳の床に多くがインシュレーションボードの一枚物を使っているので、畳表の張力に耐えられずに反り返ってしまったり、また、インシュレーションボード自体の反り・歪みがそのまま出てしまうおそれがある。だから、畳の合わせ目がずれて、そこで足を取られる危険性がある。これでは、バリアフリーどころではなくバリアー住宅と言わなければならないかもしれません。
A厚みがないので、足などで踏ん張ったとき畳がずれ、外れて上にいる人間がひっくり返ってしまう危険性がある。足元に障害物は無いが、気づかない所に危険が潜んでいるだけに注意しなければならない。
B畳の表を新しく取り替えようとしても、床が薄く、耐久力に劣るため上質な畳表を使用できない。従って、畳の表替えについて使用できる畳表が制約される。
Cもし、薄い畳の上記の@Aの危険性をなくすために、部屋の座板(畳の下に敷きつめている板・コンクリートパネルなど)に薄い畳を固定したとしても、20年・30年と安定して固定できる金具・接着剤は有りません。たとえ固定出来たとしても、それこそ畳の一つの利点である畳表を取り替えて部屋をリニューアルするといった事が出来ません。
バリアフリーということは、最初の数日・数ヶ月・数年の間安全に見えると言うことではなく、将来にわたって安全で・危険な障害の無いということのはずです。そうであるなら、初めに障害が目に付かないからといって、いつまでも安全が保障されている訳でない事を知っていただきたいものです。隠れた将来の危険性を予見し、本物の健康的で安全な住宅を造りあげたいものです。
畳が敷物の一種としてその機能を果たすためには、敷居や壁際の木(ヨセと言う)に囲まれた空間をきっちりと埋めて、足で少々踏ん張ったぐらいでは動いたりずれたりしない物でないといけないはずで、そのためにはある程度の厚みと重さが必要です。ですから、バリアフリー住宅といえども、畳を薄くするのではなく和室全体の座板を下げて従来どうりの厚みと重さを持った畳を使用して、廊下・敷居・畳を同じ平面にするべきでしょう。
危険のない、健康的な住宅が消費者に提供されるべきである、という事に対し全面的に賛意を表明する者ですが、ただ耳に心地よく響く言葉を表面的に語るのではいけないと思います。私たちは、消費者の皆さん自身にいろんな手間を掛けてもらわなければならない面倒な事も多いですが、これからも皆さんに畳・畳表に関する本当のことを提案していきたいと思います。
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